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サキュバスちゃんの純情《長編》
第11章 幸福な降伏

「あ、あの、私が二人と結婚して二人と同居するのは、確定なの?」
指輪をどうする、と話していた二人がきょとんとして私を見つめる。あ、もしかして、今さらな話でした、か?
「あかり、あのね、俺も翔吾も、本当はあかりを独占したくて仕方がないんだよ?」
「そう。でも、あかりが一人を選べないって言うから、こうして妥協案を話し合ってるわけ」
「あかりが好きになった男だから、間違いはないと思っているけど、まだ腹の探り合いは終わってないの」
「少なくとも年末まで、あと四ヶ月は続くね。信頼に足る人物かどうか、結婚も同居も許せるかどうかは、今から見極めるの。わかった?」
私は消え入りそうな声で「はい、わかりました、すみません」と頷くしかない。
二人は火花を散らしているわけではない。お互いの腹のうちを探っているのだ。私を軸に、同士として共に生活できるかを調べたいのだ。
「じゃあ、とりあえず、年末まではお互い恋人ということで」
「それでいいよ。望さんの進退が決まったら教えて」
「わかった。翔吾もあかり以外に女ができたら速やかに報告してくれ」
一瞬、二人の視線が交錯し、火花が散ったかのように思えたけれど、二人は同時にうつむいて溜め息を吐き出すだけで、殴り合いには発展しなかった。
「……まぁ、無理だな」
「……同じく。他の女とか、ほんと無理」
「すまん。ちょっと煽った」
「望さん、煽るの下手すぎ。別にいいけど」
そうして、二人はまた同時に私を見て――大口を開けて海老の天ぷらを食べようとしている私を見て、長々と溜め息を吐き出すのだ。
「手放せる気がしない」
「俺たちはこんなに振り回されてるのに、本人に自覚なしだからなぁ」
「ほんと。小悪魔どころか、悪魔に見えるときがあるよ」
「あぁ、翔吾も? 俺もだよ。最初は天使だと思ったんだけどな」
「同じく」
湯川先生と翔吾くんは「私の悪口」という共通の話題を見つけたようで、思いつくままに私の欠点を挙げている。それをBGMにしながら、私は引き続き黙々と運ばれてきた料理を口へと運ぶのだ。
んー、鯛釜飯、美味しいです。

