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第11章 幸福な降伏

「望さんはいい人だね」

　抱き合い、萎えたり硬くなったりを繰り返す熱杭を受け入れて、少し腰を動かしながら「でしょう？」と翔吾くんの唇を食む。
　イク気はない、戯れのような繋がり。けれど、これが気持ちいい。

「あかりをちゃんと想っているのが伝わってくる。話も面白いし、飽きないね」
「良かった。翔吾くんにそう言ってもらえると嬉しいな」
「でも、譲る気はないから。諦めないからね、俺」

　健吾くんに私を譲ろうとしたときのことを思い出したのか、強く「諦めない」と言われる。とても、嬉しい。幸せなことだ。

「でも、まぁ、望さんとならうまくやっていけるかも」
「それなら良かった」
「雄兄とはうまくやっていける自信ないから、ダメだよ」
「は、はい」

　大丈夫。私もうまくやっていけるとは思えないから。それを踏まえた上で、お断りをするから。

「あかり」
「うん？」

　舌を求めて、視線を絡めて、ゆっくりと交わる。バラの香りに包まれながらの、スローなセックス。

　セックスは食事だけではない、と気づかせてくれたのは、二人。
　肌で触れ合うのは幸せなことだと、湯川先生と翔吾くんが教えてくれたのだ。

「雄兄のこと、怖かったでしょ？　ごめんね、気づかなくて」
「翔吾くんは悪くないよ。私が油断していたのが悪かったの」
「油断も隙もなくなったら、あかりじゃないよ、それ。別人だよ」

　……ちょっと酷いね。傷ついたぞ、私。
　抗議の意味も込めて頬を軽くつねると、翔吾くんが笑う。

「あかりは今のままでいいよ。変わらないで。俺があかりを守れるよう強くなるから」