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サキュバスちゃんの純情《長編》
第11章 幸福な降伏
「一回経験してしまうと、想像する楽しみがなくなってしまいますし」
「はあ……」
「あかりさんは僕の好みではありませんし」
「それは私もですけどっ」
好みではない、と言われると何でこんなに腹立たしく思えるのか。たぶん、相手が水森さんだからだろう。ほんとムカつく。
「……万が一ハマってしまったら、抜け出せなくなりますからね」
……あぁ、それは困る。
例え一夜限りの過ちで体を許したとしても、セックスの相性が抜群に良かったら――それはそれで、地獄だ。
確実に、一夜限りの関係ではなくなってしまう。抜け出せなくなってしまう。
結局、セフレが一名増え、恋人たちから糾弾されるだけだ。考えるだけで恐ろしい。
「では、今後も我々の間には、肉体的な接触はナシということで」
「もちろん。おやすみなさい、水森さん」
「おやすみなさい、あかりさん」
明かりを落とすと、静寂が訪れる。
水森貴一の子孫との関係は、これで良かったのだ。これが最善の結末だったのだ。私は、そう言い聞かせる。
これでようやく、水森貴一の呪縛から解放された――そんな気分だ。
「……来月の連休、台風が来ないといいですね」
水森さんの言葉に、応えようかどうしようか悩んだ末、私はただ一言だけ口にした。
「……そう、ですね」
それきり、水森さんとは会話をすることなく、程なくして、私は眠りについた。