この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
サキュバスちゃんの純情《長編》
第12章 性欲か生欲か
海、は私にとっては、この小さな海だ。海が広くて大きいものだなんて、水平線を見た今でも信じられない。
海は小さくていい。そうじゃないと、叡心先生がどこへ行ってしまったのか……ずっと探さなければならないから。
叡心先生が眠るのは、この小さな海の中。
手を伸ばせば届きそうな、真っ黒な棺。
何度、一緒にいたいと思ったことか。
連れて行って欲しいと願ったことか。
そう思いながら、何度、海の中へ落ちたことか。
けれども、叡心先生は現れてはくれない。私の手を取り、海の中へと引きずり込んではくれないのだ。いつだって、邪魔が入る。誰かに助けられてしまう。
それが、叡心先生の答え。
生きろ、というメッセージ。
生きてもいいのですか。
幸せになってもいいのですか。
あなたへの愛を忘れたくはないのに。
他の愛を受け入れても構わないのですか。
叡心先生は答えてはくれない。
だから、私が、答えを出すしかないのだ。
叡心先生への心の操を捨て去ることができるのは、私だけなのだから。