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サキュバスちゃんの純情《長編》
第12章 性欲か生欲か
「雨、まだ降りそうだね」
私と同じバスローブを着た湯川先生が、背後に立っていた。どうやら起こしてしまったらしい。まだ寝癖がついている。
「体は大丈夫?」
「うん、大丈夫。先生は? しんどくない?」
「もちろん」
湯川先生が背後から私を抱きしめてくれる。その暖かさに体を預け、ぼんやりと海を見る。まだ波は高い。
叡心先生が身を投げた場所ではないけれど、海は海だ。繋がっているはずだ。
「……あかり。正直に答えて欲しいんだけど」
「うん?」
「あかりが昨日言っていた、大好きな人って――」
耳元で深い深い溜め息。
先生?
「――村上叡心?」
ざわり、胸が騒ぐ。
一瞬で、頭が真っ白になった。驚きすぎて、言葉が出ない。
なんで、先生がそれを?
なんで、そう思うの?
もしかして水森さんから聞いた?
「あかりは、村上ミチ、だね?」
「……」
「隠さなくてもいいよ。翔吾は気づいていないし、言うつもりもない。だから、水森があかりの行く先を知っていたんだね」