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サキュバスちゃんの純情《長編》
第12章 性欲か生欲か
うなじにキスを落とし、そのまま左肩へと唇を移動させながら、湯川先生は溜め息をつく。彼の目に映るのがほくろであることは間違いない。
……そっか、知られていた、のか。
「なん、で……?」
「同じ顔で、同じ位置にほくろがあるなんて、どれだけの確率だと思っているの」
おっしゃる通り、天文学的な数字で、ありえない確率ですよね。
……でも、いつからご存知で? 最近、だよねぇ? 最初から、じゃないよね? あの日、出会ったときからじゃ、ないよね?
「長生き、だよねぇ」
いやいやいや、「長生き」で終わらせられる問題ではないと思いますよ、湯川先生! 百年生きている女に、「長生き」って! 感想、それだけ!? それだけで終わるの!?
「……離さないよ?」
強く、抱きしめられる。その意味に気づかないわけがない。
湯川先生は、たぶん、読んでいるはずだ。水森貴一の日記、貴録を。
読んでいなくても、千恵子さんから聞いているだろう。村上叡心とその妻の末路を。
「村上叡心のようにはならない。俺は、あかりを手放したりしない」
あぁ、ほら。
そういうの、ほんと、ズルい。
私の知らないところで、私のことを知っているなんて、ズルい。本当にズルいなぁ。