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サキュバスちゃんの純情《長編》
第2章 週末の終末

 にしても、湯川先生の名前が浸透しているということは、二人が高校からの腐れ縁だというのも頷ける。

「お祖母様、その話はまたあとで。兄貴、診療所使わせてもらうよ」
「おぅ、何使ったかだけメモっといてなー」
「なぁんだ、湯川くんの彼女さんかぁ。ごゆっくり」
「ごうっくりー」
「こちらこそ、何のおもてなしもできませんが、ゆっくりしていってくださいませ」

 水森さんのお兄様とお義姉様、そして姪御さんとお母様はすぐに奥へ戻っていったけど、お祖母様は廊下に上がる私をじぃっと見つめてくる。すべての所作を見られると、マナーの悪いところがあったかしらとドキドキしてしまう。緊張する。

「月野さん、あなた、このあとお時間はございますか?」

 空気が張り詰める。そんな気がした。

「彼女は羽田に湯川を迎えに行くので、そんなに時間はありませんよ」

 答えてくれたのは水森さんだ。嘘だけど、私も頷く。水森さんが助け舟を出してくれたのだから、喜んで乗ろう。

「でも、お茶を一杯飲むくらいの時間はあるでしょう? 二人で応接室に来て欲しいのだけど」
「お祖母様」
「お願い、康太。お話し、させてちょうだい。お願いよ」

 水森さんと目で会話をする。

『どうしますか?』
『私は大丈夫ですけど』
『では、申し訳ありませんが、しばらく祖母の話し相手になってください』

 水森さんと私は同時に頷く。お祖母様はホッとした様子で、少し笑みを浮かべた。

「ありがとう。月野さん、コーヒーでいいかしら?」

 コーヒー……誰かさんのせいで飲み損ねたから、その申し出は非常にありがたい。

「……はい、大好きです」
「ありがとう。では、お待ちしているわね」

 そう、微笑んでくれたけれど。
 先ほどのお祖母様の表情は、怒っているでもなく、呆れているでもなく、嬉しそうでもなく――泣き出してしまいそうだったのだ。
 断れるはずが、なかった。
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