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サキュバスちゃんの純情《長編》
第2章 週末の終末
「……友達は、結婚したくないみたいですけど」
「あー、泥沼ね」
部のドアの前で立ち止まり、先輩は難しい顔をして唸った。
「結婚したい男と、したくない女。諦められない男、逃げる女……悲劇しか思い浮かばないわ」
……悲劇。
「わ、私は友達になんて助言すればいいと思います?」
「そうねぇ」と空を仰いで、佐々木先輩は苦笑した。
「そういう男って、女が逃げてもどうせ追ってくるんだから、一度くらいは結婚してあげてもいいんじゃない?」
「けっ……こん、以外では?」
「んー、そうねぇ」
左足の痛みも頭痛も忘れて、私は先輩を見つめる。固唾を呑んで、言葉を待つ。
「でも、それが本当に運命なら、抗いようがないわけだもの。きちんと向き合うのが、お付き合いをしている人への誠意じゃないかしら」
「誠意……」
向き合うことが、湯川先生への、誠意。
これは、男の精液だけが欲しい、と我儘を通した私への罰なのかもしれない。
「でもねぇ、月野さん。今の彼氏が重くなったからって、淡白荒木さんに乗り換えるのはどうかと思うわよ」
「や、だから、私の話ではなくて! 友達の!」
「ハイハイ。そういうことにしておいてあげるから」
「だからー! 先輩ー!」
それが本当に運命なら、抗いようがない――。
運命なら。