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サキュバスちゃんの純情《長編》
第1章 情事と事情

先生はデートをして私にいろいろ買い与えたいみたいだけど、ブランド物のバッグも財布もアクセサリーも興味はない。甘いものめぐりなら喜んで付き合うけど、先生は甘いものが苦手なはずだ。
「私はオトモダチだからね」
「わかってるよ。オトモダチとして、二つお節介」
先生がメモ用紙を差し出してきた。折り畳まれたそれを開くと、名前と番号が書いてある。
「いい医者、の連絡先」
「別に治したいわけじゃないんだけど」
「お守り。何かあったら連絡してみなよ。俺の同期で友人の精神科医だから、安心だよ」
仕方ないなぁとポケットに入れ、ダージリンを飲み干す。
先生は過保護だ。私を甘やかしてくれる。その理由も何となくわかる。先生が言わない言葉の続きは想像できる。
「でも、そいつとはセックスしないで」
「善処するね」
「んー、まぁ、あかりとしては及第点か」
「で、二つ目のお節介は?」
また紙が手渡される。映画か何かのチケットだろうかと思って目を落とすと。
「ケーキ、バイキングっ!?」
「タダ券もらったけど、俺は行けないから。日にち限定だけど、代わりに行ける?」
「行く! 有給取って行く!」
名のあるホテルで実施されるケーキバイキングのチケット。しかもタダ! 今仕事は忙しくないし、休みも取れるはず。行かない手はない。
どうしよう、ほんとは甘いもの好きの荒木さんを誘いたいけど……一人分みたいだし。一人で楽しむしかないかなぁ。
「あかりは甘いものが好きだからね」
うん、好き。大好き。
「先生ありがとう!」
どういたしまして、と笑う先生の意図に、結局、私は気づかなかった。

