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サキュバスちゃんの純情《長編》
第3章 迷惑な思惑

 新着メールあり、とパソコンの右下にポップが出てきたので、クリックしてメールソフトを起動する。差出人は、荒木さん。ドキドキしながらメールを開く。

『月野さん、資料どうもありがとう。助かりました。レアチーズケーキの件は、二十四日で大丈夫です。詳しくはまた後で連絡します。』

 スマートフォンのカレンダーにすぐ登録したくなる気持ちを抑えて、メールの続きを読む。

『花火大会は参加しますか? 都合が良ければ一緒に花火を見たいですね。荒木雄一』

 私は無言で業務掲示板を開き、「参加希望の方は」の一文を見つけて必死で続きを読んだ。
 日向さんに邪魔されるかもしれない? 佐々木先輩がいない? いいよ、それでも。荒木さんと一緒に花火を見上げて「綺麗だね」と笑い合うことができるなら、幸せな時間を一瞬でも過ごすことができるなら――それで構わない。

 頑張って、みようじゃないの!

 そのテンションのまま、総務部に参加希望のメールを送り、カレンダーに二件の予定を登録をして、さらに、湯川先生にメッセージを送る。

『私は月曜日まで休みだけど、どうする? 連れていきたいところは、ちゃんとした服が必要かな?』

 海の日を含めて三連休。病院はたぶん休み。先生が三日間一緒に過ごしたいと言うなら、とことん付き合おう。

『三連休、一緒にいてくれる? ありがとう。ちゃんとした服は必要ないから、いつも通りでいいよ。待ち合わせ場所はまた連絡するね』

 大丈夫。きっと大丈夫。
 湯川先生にはあの裸婦のモデルが私だとはバレていないし、彼が私にプロポーズすることもない。先生は約束を破らない。
 きっと、大丈夫。

 きっと。

 信じよう。
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