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剛 to 舞依
第5章 電車でゴー

今日の仕事は取引先廻り
「駿河、ここの部長さん気難しい方だから気を付けてね」
3件目の会社へのエレベーターで
先輩が忠告してきた
「はい」
気を付けるも何も
私は新人だから
先輩の後ろに立ってるだけだけど…


50代半ばとおぼしき先方の部長は
眉間に皺を寄せて確かに難しそうな人だ
が…
先輩との話の最中
ふと私と目が合ったので
機嫌を損ねないように
ニコッとして会釈したところ
一瞬固まって
急に青ざめたように見え
「さ、さ、佐藤くん!お、お客様にお茶をお出しして!」
と慌てふためきながらしどろもどろに叫んだ
「?」
先輩もあっけにとられて振り返ってきたけど
私も訳が分からず
小さく首を横に振るしかできなかった
「す、鈴木くんでもいいから!お茶とお菓子を用意して!早く!」
なおも一人テンパる部長の右手の中指には
包帯がグルグル巻かれていた
「!」
もしやこの人は…いや
コイツは今朝の痴漢野郎か?!
俺は顔を見てなかったけど
コイツはこっちを見て覚えてたんだな?

よりによって取引先の部長だったなんて
マズかったかなぁ

「ど、どうぞお掛けになって下さい」
ビビって下手にでてやがるな
「高橋くんっ!」
助けを求めるように
手当たり次第声をかけるも
女子社員達はこぞって無視
相当嫌われてるんだなぁ

「大丈夫ですよ、女子社員の方々は忙しそうですし、私達の『視床下部』も満足しておりますので」
と口元だけ笑って言うと
「ひっ!」
と部長はひきつった
「これからも良いお取り引きをよろしくお願いしますね」
「は、はい、こ、こちらこそ、よ、よろしくお願いします」
部長は震える手で判子を押して
書類を返してきた

「…部長さんどうしたのかしら?」
帰りのエレベーターで先輩が呟く
「…駿河、あんた知り合いだったの?」
「いいえ、今日初めてお会いしました」
「…そう…」
「それにしても良かったですね、イイ条件で契約して貰って」
「そうね、これは大金星よ~評価バッチリアップ間違いなしね」
「良かったですね」
「駿河、今夜は奢るからジャンジャン飲んで!」
「わーい、ありがとーございまーす」

舞依
元に戻ったら
俺が守るし
OLって大変だけど
楽しいこともあるぞ
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