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おにいちゃん、おしえて。
第9章 初恋は実らない?
それから数年経ち、清花は地元の大学生になっていた。

来年は卒業。
今は就職活動中で、真新しいリクルートスーツを着て、都内を掛けずり回っていた。

――清花も、いつか東京に出てきたらいいよ。

そう話していた英司の言葉は今も心に残っていて、忘れられない。

今も、おにいちゃんの言ったことを信じてるわけじゃないけれど。
大学を卒業したら地元は出ようと思っていたし。
そう自分に言い訳をしながら、初々しいスーツ姿で都会を歩いた。


あれからすぐ、大島家は転勤になり、遠くへ引っ越ししてしまった。
今、一緒に住んでいるのは両親だけだそうで、芽衣は就職と同時に家を出て、都心で一人暮らししているらしい。


「ふうー、暑い」

ビルの狭間を歩きまわって喉が渇いた清花は、コーヒーショップに立ち寄った。
テラス席で、リクルートバッグをチェアに置き、丸テーブルにアイスソイラテを置く。
バッグの内側につけているチャームがキラリと光り、清花はそれを指で撫でた。

これは、出発前の芽衣が、家までわざわざ持ってきてくれたもの。

「昔、きーちゃんにおみやげ買ってたのに、渡すの忘れてたよ。これ、恋愛成就!」

慎ましい紙袋に入れられて渡された、恋愛成就のキーホルダー。
観光地ならどこにでもありそうなデザインなのだが、芽衣はそれで本当に恋が実ったらしく、その彼氏とは同じ大学に進学して、今もラブラブとのこと。
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