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甘蜜トラップ
第3章 感情と強制
「家。腹痛いの」
『そか、腹痛えのは知ってる。柳瀬が言ってた。変じゃね? なんで知ってんだよ』
私が柳瀬の家にいると思ってるのか。
間違いではないけど。
「担任なんだから普通でしょ」
『そうか? つうか、なんかそういう対象で見てる気がしてならねえんだけど』
「私が、柳瀬を?」
『逆だ』
「なに言ってんの、馬鹿じゃん」
動揺した。
けど、一瞬だけ。
柳瀬が私をどういう風に見てるかは知らないけど、瑞樹が言う感じではない気がする。恋愛でもセフレでもない、誘っても本当の意味で乗ってこないんだから柳瀬は違う。
『学校来ねえの?』
「腹痛いっつってんじゃん」
『分かってるけど』
「けど、なに?」
『寂しいじゃん、俺が』
都合が良い。
私も瑞樹も都合が良い。都合良く生きてるっていうべきかな。都合の良い人間になったり相手をそう仕立てたりして利用してる。
「寂しいならもっと連絡してくれたらいいのに。LINE、既得すらつけないとか瑞樹らしくないよ」
『……あいつが見んだよ、俺のスマホ』
「は?」
『前田』
「そ、なんだ」
え?
スマホの中身見るとかあり得なくない?
人間としてどうこうとかプライバシーがどうこうとかじゃなくてパスワードくらいつけてるよね? じゃなくても認証システムがあって通過出来なきゃ見られないと思うんだけど。
「瑞樹、管理きっちりしないと」
『まー、やっぱそうだよな?』
「そうだよ」
『あ』
「なに?」
『やべ、噂をすればだ。切るわ』
ーープツ、と途切れる音がした。
勝手だ。瑞樹は勝手だ。でも話せたことが少し嬉しかった。このまま私は瑞樹と話せずに学年が上がってそのうち卒業するんじゃないかってくらい考えてたから、打開出来る気がして。
学校行こう。
一般客として。
……。
待って待って待って。いやここ私の家じゃないし。柳瀬の家どうやってきたか分かんないし、どうやって学校まで行くんだ。
ソファーに項垂れる。
面倒臭くなった。
考えるのも動くのも。