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甘蜜トラップ
第4章 惰性と欲求
彼のスマートフォンには確かに私たちの姿が残されていた。それは嫌味なくらい鮮明に、私が瑞樹の上に乗っているところだった。動画ではなく静止画なだけまだ良かったのかもしれないけれど……。
「それで、これを撮って私にどうさせたいの」
「んー? 付き合ってほしいなあって」
「どこに?」
「どこじゃなくて僕と」
「なに言ってんの? 私のこと好きなの?」
「学校でこんなことしてんのに恋愛には疎いんだねー。別に好きじゃなきゃ付き合っちゃいけない理由なんてないよ。ていうか逆に好きじゃなくても付き合う理由はあるんだよね」
「は?」
なに言ってんの?
なんで私がこんな二重人格野郎と付き合わなきゃなんないの。なにが目的?
……いや、目的なんて一つしかないのか。より明確に言葉にする必要があるなら、それは容易に知ることができそうだ。
スマートフォンの電源を切ってポケットにしまいこんだ彼は倒れた自転車を起こし、私の横にやってくる。
「浅木君じゃなきゃ駄目なの?」
「別に」
「だよねー、佐々木君とかともヤってんでしょ?」
「それどこ情報……?」
「男ってのはだいたいヤれるだけの女の話は軽率に語るもんだよ。ほら、みーんな経験自慢したがりな年齢だしね」
「あんただってそうなんじゃないの」
「そうだよ、って言ったらヤらせてくれんの? 橘さん。僕は橘さんみたいに割とキレイめな女の子だったら普通にヤれるけど」
ふざけんなよ。
「下品だよ、そういうの」
「どの口が上品を語るの? 馬鹿馬鹿しい。で、どう。取り引きするの? しないの?」
さっきの写真を引けに出すんだ。やり方が陰湿過ぎる。瑞樹に恨みがある? なんの? それで私が庇わなきゃなんない理由があるの?
あるよ?
あるよ、そりゃあ。
瑞樹は私の学校生活で唯一お昼ご飯を一緒に食べられるような存在で、そんなの絶対セフレとか関係ないじゃん。そうだよ。セフレでいいなんて私思ってなかったんだよ。
「瑞樹になんかしたら許さないから」
「じゃあ、一回毎に写真一枚消す取り引きは承諾してくれるってことかなー?」
「何枚あんの」
「連写しちゃったからなあ、30枚くらい?」
「……は、」