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甘蜜トラップ
第4章 惰性と欲求
結局流れで一緒に帰ることになってしまった私は校門のところで彼を待っていた。「チャリ通だからちょっと待ってて!」とかなんとか言いながら自転車置き場に行ってしまったのだ。待つ義理もないけど私は一体なにを……。
野球部が運動場でまだ頑張っているのをぼうっと見つめていると私を呼ぶ声がした。
「橘さんって浅木君のこと好きなの?」
「なんで?」
自転車があるのに乗るでもなく横を歩く彼は「おっかしいなあ」と呟く。
「なに? なんでそんなこと聞くの」
「いや、好きかどうか聞くのなんて普通でしょ。橘さんのその反応の方が変だと思う」
「……そうかな」
「清楚っぽいイメージ持ってるよ、男側からすればね。クラスで女子同士の交流に関心を示さないクールビューティーな橘さんが淫乱だってこと想像もしてない」
「なにそのクソ設定。誰が淫乱、」
放って帰ろうと足を速めた途端、後ろでガシャンとなにかが倒れる音がした。それが自転車だということはすぐに分かったけれど、それよりも自転車を放り出してまで私の腕を掴んでいるこの男をどうすべきか。
なにを考えているの?
「いいの? 裏階段であんなことしてたって話、ばら撒くよ? 写真もあるしね。まさか橘さんがこんなにビッチだったなんて」
「……」
は?
なんなの?
今日突然話しかけてきたと思えば、次は脅迫? 私に興味があるとか言いながら実は柳瀬に関心があるんじゃないかと思ったけど、本当に私に迫ってくるなんて予想外だった。
「写真見せて」
「無理だよ、消すでしょ?」
「どうせスマホでしょ、あんたが持ってたらいいじゃん。消さないよ」
「……おっけー、ちょっと待って。逃げたら拡散するからね」
「あんた私になんの恨みがあって、」
「恨み? 橘さんに? 僕が? あるわけないじゃん。あるなら浅木君だよ」
「瑞樹……?」