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痴漢脳小説2 ~ガールズバンドに男子の僕が入っちゃいました~
第6章 『仲間』
 お姉さんのオーカさんこと立花桜歌さんが亡くなった。それから二年、妹の詩歌さんはヴォーカルレッスンに明け暮れた。そしてオーカさんに負けない歌唱力を身に付け『シーカ』となって『パンツァーカイル』の二代目ヴォーカルになった。

「あの時は本当に驚いた…でも嬉しかった」

 イズミさんは微笑む。優しい顔で。
 こんな顔のイズミさんを見るのは初めてだ。

「その時に私は決めたの。何があってもメンバーを守る。今度こそ、必ず。そのためにはお金がいつか必要になる時が来るかもしれない。だから私は今の仕事を選んだ」

 先程と同じ内容の言葉。でも今度は僕の心にぴったりと張り付いた。

「なら…やっぱり受け取れないです」

 僕は声を絞り出す。
 イズミさんの話は僕のような人間にはハードでヘビーだ。

 だけど。

 そんな思いの詰まったお金を受け取ってはいけないということくらい、僕にだって分かる。

「これは…このお金はシーカさんや他の人のために使うべきです。だって…」

 だって僕は『パンツァーカイル』のメンバーじゃない。ただのお手伝い。雑用用係だ。

 …僕は『仲間』じゃない。

 なぜだか悲しくて手にした封筒がくしゃっ、と音を立てた。

 イズミさんはそんな僕を見て微笑んだ。

 今度は僕に向かって。僕だけのために。

「太一君は優しい。自宅が火事になっても火元の人を許した。でも私はオーカを殺した人を今もまだ許せない。
 太一君の優しさが私には必要なの。みんなも太一君のこと、認めてる」

 その声は優しく暖かい。

「ここに残ってまで『パンツァーカイル』の面倒を見続けてくれて、本当に感謝してる。
 君はもう、私達の仲間だよ」

 それは僕の人生の中でいちばん嬉しい言葉だった。
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