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痴漢脳小説2 ~ガールズバンドに男子の僕が入っちゃいました~
第6章 『仲間』
「『パンツァーカイル』は私とカエ。そしてオーカとあと二人の辞めてしまったギターとキーボードの五人ではじまった。みんな高校の同級生で、本当に楽しかった。
 でも、長くは続かなかった。オーカが死んだから」

 唇を湿らすように紅茶を一口。イズミさんは思い出の中を漂いながら見ているものを僕に伝えるような、そんなふうに話す。

 オーカさん。

 確か『パンツァーカイル』のテーマ曲『Let’s you go! Chase me go! (Thema of Panzerkeil)
』の作詞がオーカ、という名前の人だったはず。

「オーカは私の目の前で車にはねられて死んだの。そして『パンツァーカイル』は終わった。
 私はオーカを守れなかった。オーカを失って私達はバラバラになった」

 僕はただ黙って聞いていた。こんな時に気の利いた言葉が出てくるほど話し上手じゃないし、何よりもイズミさんの声音から僕の相槌で話を邪魔してはいけないような気がした。

 今必要なのは相槌じゃない。聞くことだ。
 しっかりと。一言も聞き逃さないように。
 遠くから近付く車が走り抜ける音が潮騒のように引いていく。

「私達の真ん中にいたのはオーカだった。みんなオーカが好きだった…
 それから二年が経ってシーカが私のところに来た。また『パンツァーカイル』をやりましょうって」

 微かに揺れる瞳が僕を真っ直ぐに射貫く。イズミさんは思い出の中から帰って来た。

「ギターとキーボードは戻ってこれなかったけどカエはハルナを連れて戻ってきてくれた。そしてまた『パンツァーカイル』は動き出した」
「シーカさんがイズミさんを訪ねて…?」

 うん、とイズミさんはイズミさんらしく小さく頷いた。

「シーカはオーカの妹よ」
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