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痴漢脳小説2 ~ガールズバンドに男子の僕が入っちゃいました~
第8章 いざ大舞台へ!
 ポケットティッシュで顔を拭き服を着て、シーカさんは少しずついつものシーカさんに戻っていく。この立ち直りの早さこそシーカさんの持ち味だ。

「馬鹿、何よこれ。臭いし、メイクし直さなきゃいけないじゃない」
「…すいません」
「見てもいいとは言ったけど触っていいなんて言ってないし…こ、こんなことまでして」

 指先でつまみあげたティッシュを僕に向かって放る。

「…はい」
「まああでも、おかげでドキドキが少しは消えたわ。とりあえず本番前だし今のところは怒らないでいてあげる。後で殺すけど」

 こ、殺すって何をされるんだろう…?

 『痴漢脳』がすっかり落ち着くと僕はシーカさんとは逆にオロオロしてしまった。

「あんた」
「は、はい」

 僕の声は見事にひっくり返っていた。

「あたし達のことちゃんと見てなさいよ」
「はい」
「いつもと同じじゃダメなのよ。いつも以上にしっかり見てるのよ」
「…はい?」

 むぎゅ、っと僕の顔を両側からつかみ挑むような頼むような目で僕を真っ直ぐに見つめる。

「今日は完全アウェーなのよ。あたし達を観に来ている人なんて一人もいない。あたし達の味方はあんたしかいないんだからね」
「あ…」
「もちろん、どんな客だって惹き付けて見せるけど、会場にはあんたしか仲間はいないんだから、それを忘れないで」
「…はい」

 顔を掴む力が緩む。静かに息を吸う音が再開したリハーサルの音の中にはっきりと聞こえた。

「なら今夜はあんたのために歌ってあげるわ」
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