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痴漢脳小説2 ~ガールズバンドに男子の僕が入っちゃいました~
第4章 (エロ)プロデューサー始動!
「ちょっと」
ここ数日で何度目かのシーカさんの「ちょっと」は、でも今回ばかりは戸惑いの気配を含んでいた。
「あんた何言ってんの?」
「恥ずかしさを克服するためです」
シーカさんの問いかけに、僕は用意しておいた言葉を返す。
僕のような人間は真正面からシーカさんに向き合えば、必ず負ける。一部の勝ち目もない。コールドゲームで泣く泣く土を袋に詰めて持ち帰るのが目に見えている。
だから僕はまず「全部脱いで」といきなり切り出してシーカさんの意表をついて判断力を鈍らせ、それから幾重にも用意しておいた言葉の中からふさわしい言葉を探す。
いかに相手の心理の裏に滑り込めるか、死角に自分を置けるか、が勝負の分かれ目だ。
痴漢をする時だって視覚的にも心理的にも相手の裏を突く。
気配を殺して背後に忍び寄って触る。もしくは絶対に安全と思っている自宅の窓から部屋や風呂を覗く。そうやって隙間に忍び寄るのが成功の秘訣だ。
それに比べれば、いかに苦手な種類の人とはいえ、この数か月ずっと行動を共にしていろいろ観察させてもらったシーカさんへの対策はそう難しくはない。
相手のリアクションを予想して、そのための言葉を僕はいくつも用意しておいた。
ただでさえ口下手で意思表示も自己主張も苦手な僕が自分の『痴漢脳』を満足させるには、そういった周到な準備が必要不可欠だ。
「それとも夜の部もまた、さっきみたいに消化不良のステージにしますか?
まだCDいっぱい残ってるんですよ。ここらで勢いをつけないと売り切れません」
「そ、それは…」
シーカさんは誰よりもこのバンドを、何よりも大事にしている。
バンドを継続させるためにはCD千枚を売り切らなければならないし、それを言われればシーカさんが強く反論できないことも僕の計算通りだ。
「僕に見せることが出来ないで、お客さんの前に立てますか? 僕に全部見せられればお尻がはみ出すことくらい何ともないはずですよ」
「それはそうかも、だけど…」
珍しく歯切れ悪く話すシーカさん。
さっきの自分のパフォーマンスにも納得がいってないんだろう。
ちょっと申し訳ないけど、それも利用させてもらう。