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蝶が舞う時
第21章 意志を継ぐ者
ステーキを食べ終え、デザートが運ばれてきた。

「おじさんと菜摘は今年の春に結婚した。」

美咲のフォークの手が一瞬止まった。

俺は美咲が出て行った後の経過を順次説明した。

菜摘が医大生になり、結婚して先日双子の女の子を出産したこと…

美咲は黙って聞いていた。

俺が話終えるとしばらくして美咲は

「おじさん、どうして私に会いたくなったの?」

美咲は納得出来ない様子だった。

無理もない。

美咲は俺に自分を選んで欲しかった…


「美咲…実はおじさん…癌になってしまった。」

「えっ…癌?」

「うん、すい臓癌…既に手術不能で、5年生存率は10%以下だそうだ。」

「そんな…」

「今の状態では恐らく1年もたないと思う…」

「お、おじさん死ぬの?」

「ああ…残念だが…」

美咲はショックを受けていた。

「今日、美咲に会いに来たのは、お願いがあるから…」

「お願い…」

「ああ…」

「菜摘は俺が逝ってしまったら、精神的な支えを失い恐らく自力では立ち直れない。ましてや双子の子育ても無理だろう。」

「おじさんの意志は、おじさんが死んだ後に菜摘が立ち直り、普段の生活をして子育てを行い、そして将来医師となって自立させたい。」

「おじさん自身はもうそれが出来ない。」

「普通はあり得ないことだが、おじさんの元家内に菜摘の支えと子育てをお願いした。まだ返事はもらってないが…」

「美咲には同年代として菜摘の相談相手になって励ましてもらえないか?」

「美咲にもおじさんの意志を継いで欲しい…」

美咲の目から涙が溢れる。

「おじさん…バカよ。自分が大変なのに、菜摘の事だけ考えて…」

美咲と俺はしばらく無言になった。

「美咲…頼む…おじさんが逝った後、菜摘の様子を見てくれ…」

美咲は下を向いてしばらく黙っていた。


「わかった…おじさんの意志を継ぐ…」

「その代わり条件がある…」

「条件?」

「今夜は永遠に私と繋がって。」

「わかった…美咲と一つになろう…」


俺と美咲はステーキハウスを出た。

「美咲、何処に行こうか?」

「おじさん…私のマンションに来ない?」

「美咲はいいのか?」

「おじさんのマンションよりは狭いけど、おじさんが良ければ…」

「それじゃ…美咲の所に泊めてもらおうか。」

俺は 車を美咲のマンションに向けた。

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