この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
蝶が舞う時
第22章 菜摘へ
「菜摘…心配無い…おじさんはそう簡単にはくたばらない…」

「おじさん…菜摘を一人にしないで…」

菜摘の瞳から大粒の涙がこぼれ出す。

「明日、授乳が終わったら大学病院で治療の打ち合わせがあるから、菜摘も聞いて欲しい。」

菜摘はテーブルに伏して泣き続けた。

俺は菜摘の横に座り、菜摘を抱き寄せる。

「菜摘…大丈夫だ。大丈夫だから…」

菜摘は俺の胸元でしばらく泣き止まなかった。

結局その日、菜摘は止まってしまった。

俺の言葉には反応するも自ら動こうとはせず、俺はずっと菜摘に寄り添った。

やはり危惧した通りの結果だ。

厳しい…



次の日、菜摘が産科病院で授乳を始めた頃、スマホに着信が入った。

俺はフロアーの外のベランダで電話に出る。

電話は元家内の恵子からだ。

「もしもし…」

「もしもし…あなた?」

「ああ…俺だ…」

「菜摘さんに話をした?」

「ああ…昨日退院してから家で話をした…」

「そう、どんな様子?」

「正直、厳しい…危惧していた通りだ…ショックなのは判るが自ら動こうとしなくなった…」

「今はまだ、あなたがいるから良いけど…」

「そうなんだ…これじゃ死ねない…」

「そうよ、1日でも長く生きないと…」

「でもなぁ…必ず最後が来る…」

俺は目の前が涙で曇った。

「あなたの代わりは出来ないけど…意思を継ぐわ。」

「本当か…恵子…」

「あなたの口から恵子を聞くのは、何十年ぶりかしら…」

「但し、あなたの意思を継ぐには条件があるの…」

「条件…?」

「そう、私が動き出すのは、あなたが逝ってから…」

「…」

「だって、あなたがまだいる間に元妻が今の妻と対面なんておかしいから…」

「だから、お見舞いも遠慮する。本当は会いたいけど…」

「それと、菜摘さんが私を受け入れること…」

「菜摘さんが拒否するなら、私は無理…」

「判った。恵子…本当にありがとう…」

「今は離婚したけど…私の気持ちは菜摘さんと同じよ…」

「恵子…済まない。」

「また、何か有ったら連絡してね。それと治療を早く始めないと…」

「じゃ、これ以上話すと泣いてしまうから…」

「ああ…ありがとう…」

俺は電話を切った。


恵子と美咲が俺の意思を継いでくれる…

菜摘…お前はもう一人ではない…


/181ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ