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蝶が舞う時
第22章 菜摘へ
新生児ルームに戻ると菜摘は授乳を終えて出ていた。
菜摘はガラス越しに桂菜と奈菜を見守る。
「早くお家に帰ろうね…」
俺は菜摘を促して大学病院に向かった。
車の中では、菜摘は全く喋ることはなかった。
大学病院に着き、専門外来の窓口で受付をしてから待合室で待った。
「東条さ~ん。」
俺は返事をすると看護師がやって来た。
「診察の前にCTを撮る指示が出てますので、CT検査室に行きましょう。」
俺は菜摘を待合室に残して看護師と向かった。
CTは30分位で終わり、菜摘のいる待合室に戻った。
菜摘は俺が戻ると俺の腕にしがみつく。
「東条さん、2番診察室にどうぞ…」
俺は菜摘と腕を組んだまま診察室に入った。
診察室では3人の医師がモニターを見つめている。
その中でも初老で眼鏡を掛けた体格のよい医師が、俺に気がついた。
「ああ…東条さん、お掛けになって下さい。」
「えーと、そちらは娘さんですか?」
「あ、いえ、家内です。」
「奥さんでしたか、失礼しました。」
横の医師が初老の医師に
「先生、こちらの奥さんは当大学の医学部1年生だそうです。」
「そうですか。私は腫瘍外科の責任者で重藤と申します。大学でも講義をしてますから、奥さんが専門過程に進まれると、私の講義でもお目にかかりますね。」
「東条さん、今日は奥さんもおられますが、事実をお伝えしてもよろしいですか?」
「はい、お願いします。」
「奥さんもよろしいですか?」
菜摘は下を向いたまま小さな声で
「はい。」
「先ほどCTを撮影しました。結果から申しますと肺への転移が認められます。」
「肺…転移…」
「正直、進行が早いです。このまま推移すると、あと一年は厳しいかと…」
俺は頭が真っ白になった。
菜摘は泣くのをじっと堪えている。
一年ももたないのか…
「直ちに抗がん剤と放射線の治療を始めましょう。」
別の医師が
「それでは本日入院の手続きをしてお帰り下さい。」
「あの…通院で治療をしたいと思います…」
別の医師は
「東条さん、抗がん剤や放射線は副作用が強いので、通院は無理です。」
「私は入院出来ません、家内のためにも、生まれた双子の女の子ためにも…」
「私は自分の命より、家内と子供達の方が大事なんです。」
菜摘は堪えきれなくなり、泣き出した。
菜摘はガラス越しに桂菜と奈菜を見守る。
「早くお家に帰ろうね…」
俺は菜摘を促して大学病院に向かった。
車の中では、菜摘は全く喋ることはなかった。
大学病院に着き、専門外来の窓口で受付をしてから待合室で待った。
「東条さ~ん。」
俺は返事をすると看護師がやって来た。
「診察の前にCTを撮る指示が出てますので、CT検査室に行きましょう。」
俺は菜摘を待合室に残して看護師と向かった。
CTは30分位で終わり、菜摘のいる待合室に戻った。
菜摘は俺が戻ると俺の腕にしがみつく。
「東条さん、2番診察室にどうぞ…」
俺は菜摘と腕を組んだまま診察室に入った。
診察室では3人の医師がモニターを見つめている。
その中でも初老で眼鏡を掛けた体格のよい医師が、俺に気がついた。
「ああ…東条さん、お掛けになって下さい。」
「えーと、そちらは娘さんですか?」
「あ、いえ、家内です。」
「奥さんでしたか、失礼しました。」
横の医師が初老の医師に
「先生、こちらの奥さんは当大学の医学部1年生だそうです。」
「そうですか。私は腫瘍外科の責任者で重藤と申します。大学でも講義をしてますから、奥さんが専門過程に進まれると、私の講義でもお目にかかりますね。」
「東条さん、今日は奥さんもおられますが、事実をお伝えしてもよろしいですか?」
「はい、お願いします。」
「奥さんもよろしいですか?」
菜摘は下を向いたまま小さな声で
「はい。」
「先ほどCTを撮影しました。結果から申しますと肺への転移が認められます。」
「肺…転移…」
「正直、進行が早いです。このまま推移すると、あと一年は厳しいかと…」
俺は頭が真っ白になった。
菜摘は泣くのをじっと堪えている。
一年ももたないのか…
「直ちに抗がん剤と放射線の治療を始めましょう。」
別の医師が
「それでは本日入院の手続きをしてお帰り下さい。」
「あの…通院で治療をしたいと思います…」
別の医師は
「東条さん、抗がん剤や放射線は副作用が強いので、通院は無理です。」
「私は入院出来ません、家内のためにも、生まれた双子の女の子ためにも…」
「私は自分の命より、家内と子供達の方が大事なんです。」
菜摘は堪えきれなくなり、泣き出した。