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《愛撫の先に…②》
第1章 あたし磨き
部屋はいつでも泊まれる事が出来るように掃除が行き届いて、
ごみ箱には透明の袋・トイレットペーパーも三角折にされ頭上棚にはストックさえあった。

それは結城自身がやっているのか清掃係なのかはわかるはずもない。
予言をしていた頃には毎日の清掃は欠かせなかったが、
予言をやめた今は菜々美ひとりの為の部屋になり清掃も毎日でなくてもいいはずである。

ソファーでくつろぐ前に菜々美は買ってきた食材を冷蔵庫に入れ始めたが、
3段の一番上にある箱に注意を向ける。

『牧場プリン?
スーパーでもコンビニでも洋菓子の店でも見かけないけど通販取り寄せなの?
どこのメーカーかなんて勝手に見る事は失礼よね』

夕方のニュースばかりで菜々美は19階に降りて携帯小説1冊を取りプロローグ的な出会いにため息、
あとがきにはこう書かれていた。
※「家事の合間の息抜きに書き始めた携帯小説がまさかの入選!?
最初で最後の処女作記念に応募したのが私の作家生活の始まりでした」

―――そんな内容に菜々美は巻末の作家募集概要に目を通す。

『2冊本が出てる、
家事の合間の息抜き?
専業主婦なのかしら?
本屋さんに行くと売り切れて在庫がない作家だった気がする』

家事の合間の息抜きか…
入選…
他には現役高校生の子もいたりして…
ここに並べられた著者はみんな夢を叶えてるのね…

あたしは会社に行って陽子とご飯して帰るだけ…
仕事には慣れたけど…
慣れたけど…

あたしこの著者さん達に負けてるね?

結城菜々美になりたい事しか…

『携帯小説か…』
菜々美はQRコードを読ませサイトを開くが首を振り部屋を後にした。

あたしには無理…
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