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《愛撫の先に…②》
第2章 菜々美は菜々美
矢嶋のアドバイスも必要なしとばかりにその夜結城は勤務先から歩いて行ける範囲内の物件をいくつかリストアップしていた。

『菜々美の見た物件と合わせて決めていけばいい』
『結城さんスイートタイムを離れるなんて…』
『君の為だ』

結城を思えばこそ菜々美は引っ越し等やはり喜べず、
勧める矢嶋との会話も終わらせたくあの時席を立ったのである。

すべては結城を求める相沢や優紀ら女性が菜々美の存在が疎ましく、スイートタイムに住む事を許さないのが原因なのだ。

【スイートタイムに押し掛ける行為は他のお客様へ迷惑かと思われ。
我々従業員は1人1人気持ちよく過ごしていただき、また泊まりたいと思える雰囲気づくりを大切にしている為に迷惑行為は控えていただきますよう。
どうかご理解の程よろしくお願いいたします。結城啓輔】

結城は押し掛け行為に注意を促す書き込みをサイトに掲示した。
彼にとってはお客様第一ではあるが日常を忘れ楽しんでいただきたい気持ちと、菜々美を守る為ゆえに。

はたしてこの書き込みは彼を求める相沢ら女性らに効くのかは疑問ではある。

スイートタイムに興味を持ち検索していた矢嶋も読むことにもなり。


――
菜々美の携帯に矢嶋から電話が入ったのは2日過ぎた昼休みになる。

『サイトの書き込み、トラブル?だから引っ越しは早めだっていうの』
『引っ越しはまだ物件が…』
『ところで更新分まで読んだわよ、《蒼い恋人》』
『よよよ読んで!?』
『明日の祝日会わない?』
『結城さんはお仕事だし陽子はデート、あたしは予定なしです』


――
翌日約束の店で彼女は矢嶋以外の女性を見て初対面なのに知っているような気がした。
その彼女は菜々美にとって吉なのか凶になるのか?

『小説家たまごの執筆の刺激になるかと思って主婦であり作家の彼女を紹介するわ』
『小説家のたまご?先輩っ、あたしそんなつもりじゃ…』
『単なる顔合わせよ、江崎。
それにたまごホリックの男じゃなく女性だから出会いも安心でしょ』
矢嶋は笑う。

『はじめまして』
彼女も笑った、優しく笑った。
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