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《愛撫の先に…②》
第2章 菜々美は菜々美
翔子・希美の結城を呼ぶ親しさに嫉妬し、
本を読む・打ち合わせを聞く‥‥そんな集中力は欠けていく菜々美。

『矢嶋さんから聞いてあなたの作品を読ませてもらったけど――蒼い恋人って実際にモデルが?
彼を想像しちゃうのはあたしの男性の友達が少ないからかしら?』
『モデルなんていません』
『そう?
だけど彼だけを詳しく書いてヒロインや脇役の描写が足りなくて作品として響いてこないわ』
『あたし作家を目指しているわけではありません』
ケーキとコーヒーの代金をテーブルに置き菜々美は席を立ち逃げるようにカフェを出た。
『ちょっ、江崎っ?』
結城からも逃げた過去を思うと日常的にそうするのかと思うが、
菜々美は基本的に優しいので臆病な気持ちが先行し矢嶋の声がするのも構わずに居たくない感情に従った。

その夜は結城の顔も見ずに先にベッドに入った、
結城が悪いわけではないのだが顔が見れないのだ。
『菜々美………?』
シャワーを済ませバスローブ姿の結城が彼女の髪を撫でて呟く。

見たくない…

結城さんが翔子さんに笑いかけ希美ちゃんを抱っこする‥‥‥
中谷専務の息子さん・将也さんがいるなら親友に会いにきたと思うから嫉妬よりも羨ましさだけ。

だけど翔子さんと希美ちゃんに会う為なら嫉妬でどうにかなってしまいそう。

翔子さんは結婚しているのに!
希美ちゃんは将也さんの子供で結城さんのではないわ!
わかっているのに何故嫉妬し彼女らを頭から追い出そうと思うの!?
あたしこんなに意地悪で心が汚かったかしら?

結城さんに関わる人に羨ましさと嫉妬をしてしまう!
どんなに同棲していても翔子さんには敵わない!
結城さんが「あいつ・翔子」と呼ぶ親しみはあたしには向かれていないのだから!


――
通勤の為に支度する菜々美に後ろから結城が声をかける。
『眠れなかったのでは?』
『ううん』
本当はあまり眠れていないけど嘘をつく。

『フロント業務は2人いる、菜々美送っていくから』『いいの』
彼女のバッグがあたりテーブルの書類が落ちていく。
『拾わなくていい』
結城のその剣幕に菜々美は彼が手にした書類が気になった。

それには検診の文字が!
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