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《愛撫の先に…②》
第2章 菜々美は菜々美

***

3日後には新生活を始める為の準備に菜々美は夕方から夜にかけて白い一軒家の新居へ向かう事が続いた。

もちろん菜々美任せにする結城ではないので昼間のジムを休み新居のカーテンを付け電球等を付け替えたりしているのだ。

引っ越し等あまり経験しないか久しぶりだったりするとアサヒコーポレーションの仕事より疲れたりする。

次の日――
菜々美は営業部の女性と中谷の会社に訪れ、
中谷に会った帰り際トイレで体をほぐす為に両手を上にあげ伸びをする。

『ふっああ、んーっ、
引っ越しって地味できつい』

そんな見られたくない体の凝りをほぐす為のポーズを通りがかった中谷に見られていたようだ。

『疲れているようにみえたのは気のせいではなかったみたいですね』

『えっ……中谷専務?
あたし仕事中にあくび等はしていなくて…』

『座る姿勢がぎこちなくて時々肩を気にしていましたね?
もうすぐ12時でお昼にしませんか?』

『またご馳走になるわけには、あの、先にロビーで待つ営業部の連れがいて…』
中谷とは高瀬と来た昼食と、個人的に約束を受けた夕食と2回ご馳走になっている為に遠慮がちな菜々美である。

『おじいちゃーん、
車から見えたたまご屋さんに行こ〜』
向こうからペタンコの赤い靴音がバタバタと軽快で、中谷にかける親しげなお願いに中谷が振り向く。

おじいちゃんと呼んだのは中谷の孫・希美だった。

希美ちゃん何でここに居るの?
翔子さんも何処かに居たりするのかしら……

菜々美は失礼だとは思いながらも中谷の誘いを断りその場から立ち去った。


その夜、スイートタイム。
2008で結城の帰りを待つ菜々美は隣の2007に行き、
改めて家具やベッドさえ何もない事に寂しさを感じた。

『菜々美?ここに居たのですか』
2008隣の部屋から顔を覗かせる結城は勤務が終わったらしくネクタイをゆるめる。

『何もない部屋が寂しいのですか?』
『結城さん、ううん』

あなたが居れば何処に行っても平気…
だけどここはあたしが処女を失った場所だから…
あなたが居れば何処に行っても平気…
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