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《愛撫の先に…②》
第2章 菜々美は菜々美
―
――
―――
それから1日経った夜、部屋はスイートタイム2008。
菜々美がデスク引き出し一番下にあるブルーのプラスチックの箱を開けたのはそれから10分後になる。
箱の中には写真や手紙等が束であり結城らしく整理されクリップで留められていた。
その写真とは、
文化祭や卒業式等で無邪気に笑う制服姿の髪の長い翔子。
髪をアップにしたウェディング姿の翔子。
ポニーテールでラフな服装の翔子。
マタニティー姿のお腹の大きな翔子。
産まれて2週間の希美を抱き嬉しそうな翔子。
そして翔子ら夫妻の新婚旅行先から届いた絵葉書。
お土産に添えられた手紙やメッセージカードは翔子の夫・将也からの物と、翔子からの物とがあった。
菜々美は写真の女性が翔子だとわかってしまったのは仕事の取引先の専務である中谷が見せてくれた写真からであった。
腰までの髪がウェディング用に上でまとめていようがポニーテールになろうが、翔子だとわかってしまう。
そしてまた菜々美は最近の翔子に会っているからこそ、難なく過去の翔子の写真を同一人物だと認識出来るのだ。
見たくない――
デスクに広げられた写真をクリップで留めメッセージの束を手に取る。
見たくない――
だけど…
あたしも結城さんに牧場プリンを食べさせてあげたい…――
だから少しでも手がかりをつかみたいから――
だから、だから見たくもない翔子さんからのメッセージを知りたいの………
メッセージの数々には啓輔くんへで始まり翔子よりで締めくくられ、
翔子らの何気ない日常や旅行先での思い出が書かれていた。
苦しい…
翔子さんから結城さんへの気持ちが友情であっても、親友や彼並みに感じるのはあたしが嫉妬しているから?
メッセージカードから何か情報が得られるかなんて粗捜し等もう止めよう――
だがハラリと落ちた1枚に牧場プリンの手がかりである住所と電話番号が載っていた。
―
――その時ドアの鍵を開ける音がして菜々美は箱を抱え隣の2007に通じるドアに向かった。
背中越しに聞いたのは翔子の娘の希美の声になる。
『けいすけくんと希美お泊まり〜』
『ダメでしょ、希美。
啓輔くんはお仕事なのよ』
翔子さんと希美ちゃん?
菜々美は視界から見えない場所から声のする後ろを振り返っていた。
ああ、結城さんがいる―――――!