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《愛撫の先に…②》
第5章 占いのままに
『連れの女が迷子になったと探して怒鳴ってまた駅員に注意された、いったい何処に隠れていた?』
スエット男はそれがムカつくらしく頭をかきむしる。

かけばフケが出そうな…
だらしがないってこういう感じ…

『あたしはあなたの女ではありません、だから…』
後ろに下がろうとする彼女。

『へっ、今から女になんだよ』
腹をたてたへの字の唇、ニヤリと右の口角をあげ笑う。

彼女は腰めがけてカバンを大きく振った、バシンと音がしてスエット男は驚き奈々美の肘から手を離した。

今よっ…
走れるとこまで精一杯…
2日分の汚れ物が入ったカバン、残念だけど男の側に取りに戻るつもりはない…
ミニバッグの中の財布とスマホさえあれば…

駅構内を走り抜け、先ほどの噴水を大きくさけて走ったところで奈々美はスエット男に先回りされ目の前に立たれた。

『女っ!怒られて、走って、腹が減って、あんたと出会う前コンビニでお金使い込んで飯も食えねえっ!』
ぐうぅと相手の腹がなる。

『お家に帰れば?ご飯くらいあるはずです、つまらない嫌がらせなんかしないでくださいっ』
早口でまくし立てる彼女は恐怖と怒りからだ。

『飯?街に遊びに来て何も食わずに帰れだと?あんたをやれば貰えんだからよっ!』
スエット男はスマホをちらつかせポケットに入れた。

スマホ?あたしをやれば貰える?
いったいなんの事なんだろう…
ううん、考えないで逃げるの…
公園…あそこの公園に逃げれば…

奈々美は前でも後ろでもない横方向へと走り始めスエット男の隙をついた感じになる。
小さな滑り台のてっぺんへと登るが彼女は息も絶え絶えだ。

『はぁ…はぁ…、素直にやらせろっ』
スエット男は運動不足と空腹で奈々美より息があがっている様子だが確実に滑り台の周りに来ていた。

何時なの?
16時の急行に乗りたいのにこんな事に巻き込まれてはスエット男れない…

ギュッギュッと男がスニーカーで滑り台に登って来るのが近づいてくる。

奈々美は滑り台を小刻みに降りまた無我夢中で隣の駐車場へと走りだした。

『このクソ女っ!』
スエット男は頭にきたようだ。

駐車場へと着いた時彼女はパンプスのかかとがクチッと音をたて折れたのを確認し脱いで武器だと言わんばかりに片手で持った、ストッキングにアスファルトの地面、走りづらいに違いない。

急行まで後20分。
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