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《愛撫の先に…②》
第8章 愛撫の先に…
『最低?好きなように言うがいい…君が俺を拒絶するなら気持ちの整理がつくまでここで寝泊まりしていた、だけど陰でコソコソ…聡兄が教えてくれなければ知らなかった事…君の裏切り……』
先ほどから彼の姿勢は変わっていない、淡々と喋る。

『あたしの裏切り?あたしは裏切ってなんか…』
彼女の方が動揺しドアノブを握りしめる。

『占いが必要なら俺とキスすればいいものを…そこまで俺を遠ざけるつもりなのか…』
彼はため息。

『あなたといるとつらい…嫉妬で嫌な女になっていくから…』
彼女は頬の涙を手で拭った。

『何故今まで黙っていた?君の小説は日記風で少しずつ歩み寄るカップルが微笑ましいものだったのに削除されている、タイトルの蒼い恋人も金髪…俺ですか?』
スマホを手にし彼はまっさらになったサイト画面をみせる。

『キャラクターをどんな風にしようとあたしの勝手…読んでたの…』
駄作の読者だったという事に赤くなる。

『開いたままのスマホをみて君が突然小説を書き始めた事に意外な才能があるんだなと…あまり物事を伝えたがらないから恋愛感情を知ろうとするきっかけでもあった…だが小説でもヒロインは後ろ向きで彼を諦めようとしていた…』
スマホをテーブルに置き奈々美の側に来る。

『小説の彼に彼女が出来たなら諦めるしかないもん…』
小説のヒロインと奈々美自身を重ねまた頬に涙が落ちる。

『それを後ろ向きだって言うんです、作品を削除し現実は俺から逃げようとしている、嫌いだと言いましたか?』
やるせなく彼は喋りながら片手を上に下にさせもどかしい様子。

『読んでなんて頼んでない…引き止めてなんて今も頼んでない…あなたを見るとつらくなる…』
ドアを開ける、秋の夜、空調設備で快適な温度ではあるが廊下なので静けさが彼女をより追いつめる。

スーツケースを持つ。
その彼女の後ろから彼が出てきてもうひとつのスーツケースを持った。

そんな行動をされると寂しいものだ。
彼女の心に刺さるような透明のナイフ。

『あたし帰ります…』
うつむく、スーツケースがやけに重い。

つかつかと彼女を追い越し彼はいつ手にしたのか2007のルームキーでドアを開ける。

『一緒が嫌なら隣を使うといい』
彼はドアを開け彼女を見た。

『あたしは……帰り…』

拒絶されればひとりになれるのにあたしは何故結城さんで心が埋め尽くされるの…
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