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《愛撫の先に…②》
第8章 わだかまり…
結城が帰ってきてベッドの端に座り電話で話すまで奈々美はぐっすり寝ていた。
だが夢をみていても意識の中で結城の声に耳を傾けている事で眠気はとんでしまったようだ。
寝たふりというのは実にぎこちないものでまぶたはピクピクと動き肩が振るえる。

『………奈々美?起こしましたか?…すまない』
結城はバツが悪そうに首を振った。

彼女は結城が気づいた以上寝たふり等バレるとしぶしぶ目を開けベッドから起き上がるが、側に座る結城と至近距離だという事に今更緊張するのは寝たふりをしていたからだ。

『髪を撫でられた夢がリアルで…』
髪がボサボサの彼女は恥ずかしそうに横を向いた。

『リアル?肌のぬくもりが伝わったとでも、撫でながら考え事をしていた』
フッと笑う。

『夢じゃなく…』
夢じゃなくて本当にあたしの髪を撫でていたの?
意に反して彼女はトクンッと心臓がひとつ早鐘でも打ったかのよう。

『考え事をしていたのでごく自然と…』
彼はスマホでも手にするかのような例えをした。

それについて彼女はがっかりしてしまう。
普通だったの…?

『今日仕事が忙しかったのですか?俺の勤務が終わるのが待ち切れない程に空腹だったと…』
結城はチラリと奈々美の方を向こうと座る位置を変えた。

『仕事なんていつもと変わらないわ、なんでそういう事…』
声はかすかに震えたのは動揺したから、上質な生地の布団をギュッとにぎりしめる。

『初めて会った時も、そして時々、この間も俺と君で当ホテルのディナーを食べている…何故わざわざコンビニまで行く必要がある?内線一本で依頼すれば済む事でしょう、調理する時間を多少要するがコンビニまで往復する数分を思えばどちらも変わらない、君のお腹はそれほど待てなかったのかと……気楽なもんだなと言った事は詫びてもいい』
彼女をジッとみて指先を観察するかのよう。

気楽なもんだなと言った事は詫びてもいい、だなんて年上でもなんだか嫌な感じっ…
あたしが気楽?
仕事して真面目に働いてるのにそれでもレイプまがいの事されてるのに結城さんこんなあたしを気楽とでも言うのっ?

『何か言いたそうな顔をしている』
彼は顔を観察している。

『あたしが責められる事なんてないものっ、真面目に働いているのになんで気楽だなんて訳わかんないっ』
ヤケクソ気味に声を張り上げた。

訳わかんない…
なんで責められるの?
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