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《愛撫の先に…②》
第10章 結城と奈々美
その30分後ノックする音が聞こえ奈々美は寝たふりをする。
静かにドアが開きコトッと何かが置かれその人物は出ていった。

彼女はベッドから出てテーブルをみると手作りの海苔巻きおにぎり2つとわかめスープがラップに包まれ置かれている。
「ラーメンばかりでは身体を壊しますよ、結城」
彼女はそのメモを取りゴミ箱に捨てた。

みてないふりしてみていたなんて…
すごい恥ずかしいじゃない…
身体を壊しますよ、だなんて女々しい女みたい…

実際ラーメンだけだと夜中にお腹が空くのだ、そして喉も乾きミネラルウォーターをがぶ飲みしトイレに起きそして寝坊という負のスパイラルになる。

あったかいご飯に大きめの海苔が巻かれ具は焼き鮭と梅干しで作りたてのよう、スープも湯気が出ていた。
海苔独特な風味に嗅覚と胃袋を刺激され彼女はおにぎりを手にひとくち頬張った。

美味しい…
ただのおにぎりなのに…

あっという間に彼女はそれらを完食し「ご馳走様」と手をあわせ、ゴミ箱に捨てたメモをゆっくり拾いあげ幸いにもカップ麺の横を通過し底斜めにありきれいなまま。

ただのメモでも彼女はそれを財布に入れた。

何であたしこんな事をして?
あれしろ、これはするなとめんどくさい結城さんからしばらく距離を置いて離れたいのに…

皿とカップを洗い水切りも何もないのでとりあえず台所に置く。
突然の差し入れにより彼女は空腹で夜中起きる事なく朝まで眠れた。

朝ご飯抜きでバスで会社に向かい9時過ぎ仕事に就けヤレヤレとホッと安堵。

仕事終わり、いつものとうりスーパーに寄る陽子につき合い惣菜のおにぎり2つと惣菜の焼きうどんを買う。

✜ ✜ ✜

そんな日々を過ごす中で土曜日、彼女は10時過ぎに出かけていくが忘れ物を取りに10分歩いた距離から引き返した。
フロントには従業員が1人でいて「忘れ物ですか?」と苦笑しながら鍵を渡す。
部屋に入ると消して出たはずなのに照明がついていて中腰姿勢の誰かがいて奈々美は悲鳴をあげそうになり慌てて口を押さえた。

従業員さんが掃除してくれているんだわ…

『あの頼んでいないのにいつもすみません』
彼女は頭を下げる。

中腰姿勢の人物は立ちあがり彼女の方を向く、上着を脱ぎワイシャツを腕まくりしホテルのエプロンをした結城。

『久しぶりとでも言いましょうか、奈々美』
手袋をしゴミ仕分けしていたらしい。
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