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第1章 あたし磨き

か弱い演技？
結城さんを繋ぎとめておきたい？
あたしそんなつもりじゃない…

『あたしそんなつもりじゃない…』
『そんなつもりじゃなくても周りからは、そう見えんの』

『相沢さんの迷惑になる事は何もしていないわ』
『嘘つき』

『嘘つきだなんて何でまた言うの？
あたし相沢さんの彼をとってなんかないっ』
『あの彼とは別れたからあたしには関係ないし、
あんたが気があるなら寝れば？』
『相沢さんっっ』

『悪いけど菜々美は誰とでも寝るような女じゃないんでね、
菜々美も彼女の挑発に乗ってはいけない』
菜々美・相沢の会話に結城が再び割り込んだ。

『嘘つき女をかばうの？
江崎菜々美はあたしが結城啓輔の話をする度に同情するような顔をして、
菜々美の彼は結城――だと陰であたしを笑っていたのよ！
とんだ嘘つきだわ！
関係ない、関わらないような顔をして！
だからあたしは江崎菜々美を見るとイライラすんの！
清純そうな顔をして気持ちよさそうにバイブで感じちゃって陰で何してるかわからないわ！
そんな淫乱女を彼女とでも言うの！？
今すぐに別れちゃえばいいのよ！』

相沢さん…
だからあたしに嘘つきと…だから淫乱だと…

結城さん信じて…
信じてください！

菜々美は前の相沢も後ろの結城をも見れずにうつ向いた。

涙が出そう…
結城さんに例え嘘でも淫乱だなんて聞かれたくなかった！

「菜々美、愛してるから泣かないでほしい」
先ほど言われた言葉を心の中で繰り返す。

泣かない…泣かない…

――！！

手にしていた鞄等が地面に置かれ結城の両腕が菜々美の上半身を包む。

結城さん――！

『菜々美は最初から俺が嫌いで男と駆け引きするような器用さは持ってはいない。淫乱とか見当外れで残念だったね』

頭上から聞こえる声、
後ろからの彼のぬくもりに安心していい？