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秘めごと
第2章 開花
駅に着いて改札口を通る。
階段を登り歩いていたら。
「あっ、昨日のこだ」
聞いたことのある声に振り向くと青年が1人フードを被ってよく分からない。
彼がフードを脱いでようやく気づく。
「あ、柏木さん」
「奇遇だね、茜ちゃん」
ニコっと笑いかけられて笑いかえす。同級生より少し大人びた笑顔は安心する。
「いつもこの電車なんだ?」
並びながらホームで待つ。
「あ、はい。高校が…」
「そっか、その制服俺が卒業したところのなんだ!忘れてた…まいった」
あちゃーっと言いながらまた頭をかく。
デジャブな様子に少し可笑しくなる。
「あれ、笑った顔可愛いじゃん」
「ぇっ」
ニッと笑って頭を撫でられる。
(私、笑ってた?)
頭に触れられた温もりに気付いて慌てて離れた。
彼もビックリしている。
「ゴメン、嫌だった?」
「…」
フルフルと頭を横に振ると、また笑ったような気がした。
朝のラッシュ時なのに、私は周りの音が鳴りやんだような不思議な感覚におちた。
しばらくして着いた電車に二人して乗る。
ギュウギュウで息苦しい空間に、私を庇うように手で隙間を作ってくれる柏木さん。
「ね、女の子ってさ、こういうのドキってするんでしょ?」
背中を押されながら、楽しそうに笑いかけられる。
壁に背中を預けながら見上げた。
「さぁ…」
「そこはうんって言ってよ
〜アイテテテテ」
困ったように笑いかえされて。
また私は笑っていた。