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嫌いじゃなかったの!?
第7章 6ページ目。

「それ、絶対風邪ひいてますよ!」
このジメジメして暑くなってくる時期に寒いとは
なかなかの寒がりか、風邪の人しか言わないようなセリフだ
「うちに体温計なんてないので測ってないです。多分午前中には治るんじゃないですかね?」
佐伯さんは少し掠れた声でそう言う
そうならいいけれど…
私の中では「うつされたらたまったもんじゃない」という気持ちよりも、「心配」という気持ちが上回っていた
この時の私は気付いていなかったけれど
「今日は外回りなかったですよね?無理せずデスク仕事してください。何かあったら私が代わりにするので。」
ようやく佐伯さんの腕から逃れて、向き合ってそう言う
すると、確かにいつもより顔色が悪い
白い肌が、青白く感じる
「ありがとうございます。」
これから長い1日を働いて過ごすのは心配ではあったけれど、私は冷たい水を佐伯さんに奢ってオフィスに戻ることにした
幸い抱きしめられている姿は誰にも見られずに済んだ
まぁ、すぐに振りほどいたのもあるが、あまり使う人がいないことで有名なうちの休憩スペース。
オフィスに戻ってから、佐伯さんはいつものように振舞っている。
こうして見るとしんどそうなのは伝わらない。
あの営業スマイルは体調の悪さも隠せるのか。
なぜそのようなことをする必要があるのか。と思うけれどもそれは彼にしかわからない。
あの笑顔は難儀なものだなぁ。
あの人はどのような人生を送ってきたのだろうか
そんなことを思ってしまう

