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嫌いじゃなかったの!?
第7章 6ページ目。

バス停から10分くらい歩いたところにそのマンションはあって、佐伯さんは覚束ない足取りながらも私に道を案内してくれる
いつもは音がしそうなほど爽やかな営業スマイルを浮かべ、余裕しかありません !みたいな表情の佐伯さんが今はだいぶん弱っていて、頰も赤く、余裕のない表情
時折私の顔を見て、「なんで真嶋さんの前に限ってかっこつけれないんだろう」などと呟く
その度に私は「かっこつけてる人は嫌いです」と答えた
そうすると「やっぱり真嶋さんは手強い」と言う
今までの女性がちょろすぎただけなのでは…?という疑問は心にしまっておく
佐伯さんの案内通りに歩いていると
デデーン
という効果音がつきそうなくらいの大きなマンションが見えてきて、私は今更思った
こんな高級マンションに新入社員が1人で住めるはずない…、
それなら、家族と住んでいるんじゃ?
そうだったら、私は少なくともお家の前まで佐伯さんを送ったら任務終了だ
気の利いたドリンクと食べ物なんて買ってこなくていいし、蓮に連絡なんてする必要はない
私達はマンションに入りエレベーターを待つ
あ、そういえば…
「何階ですか?」
「七階です」
私が尋ねると掠れた声でそう返ってきた
チンッと音がして誰も乗っていないエレベーターの扉が開く
私は7階のボタンを押す
「佐伯さん、こんないいところに住んでいたんですね。ご家族は何人おられるんですか?」
エレベーターの密室で私はそんなことを聞いた
佐伯さんの「育児放棄した母親」の存在など忘れて。
すると佐伯さんはゴホンッと一度せきをしてから
「一人暮らしです」
と答えた

