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嫌いじゃなかったの!?
第10章 9ページ目。
その言葉は随分と言うのを躊躇らわれたように感じた。
その証拠にその言葉は、狭いリビングの空間に消えていった。
私には届かなかった。
しかし、言葉などただのまやかしで
「ねぇ、泣かないでよ」
涙を流す蓮に私はそう言った。
私も泣きそうになりながら。
蓮が泣いているのなんて初めて見た。
蓮の質問の答えはNOだ。嫌いなんかじゃない。
しかし、今の私は、蓮を泣かせた原因を考えた。
そして結論に行き着く。もちろん私だろう。
もう恋愛初心者だからと言い逃れはできない。
蓮は私のことが好きなのだ。それほどまでに。
私がもし、凌に「杏子が嫌い」と言われたら、泣いてしまう。
それと同じように蓮は涙を流したのかもしれない。
しかし、私は本当に凌が…?
涙を流して、顔を歪めて…、そんな蓮を見ているとそんな疑問が湧き出てきた。
この人を救いたい。笑わせたい。そう思えてくる。
もう私はわからなかった。
誰が本当に好きなのか。
私は、静かに涙を流して私を見つめる蓮を抱きしめて
「好きだよ」
と、そう言った。
この人を、見捨てられない。