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嫌いじゃなかったの!?
第10章 9ページ目。
わからない。
杏子が何を考えているかまったくわからない。
今までだってわかったことはないが、ますますわからない。
まるで靄がかかってしまったかのよう。
濃霧の中を進んでいるようで、打開策がまるで思いつかない。
心の扉がしまった音は聞こえなかったはずなのに、いつのまにか固く閉じられてしまっていたその扉。
何度ノックして、叫んだってなんの物音もしない。
たじろいでいる気配すら感じない。
七月も後半にさしかかって来た。
杏子はどこか痩せたようだった。
笑っている顔も陰っているように思える。
時より、苦しげな表情をする。
そして、今にもいなくなってしまいそうな雰囲気があって、突然俺は怖くなる。
今、自分の前から杏子が消えてしまったら俺は…
初めての感情だった。
好きな人を思う気持ち。
思われるよりも、何倍もしんどい。