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嫌いじゃなかったの!?
第10章 9ページ目。
〜杏子side〜
「ただいまー」
今日もどこも寄らずに家に帰る。
「はぁ」
最近、なぜか多くなったため息。
ため息をすると幸せが逃げるというけれど、本当にそうだと思う。
今自分は幸せかと言われたら、幸せではない。
もちろん、人生は幸せなことばかりではない。不幸なことも、私はよく心得ている。
だからこそわかる、今は私は幸せではない。
最近幸せだったことはなんだろう。
そう考えてすぐに浮かんできたのは、朝の気だるげな表情で笑う凌だった。
その光景を思い出して、すぐに床に叩き落とす。
ううん。凌は好きじゃない。
好きなんかじゃ…
チクリ。
胸が痛む。
私は蓮が好きだ。蓮と生きていきたい。
でも、まだ言えてない。
『蓮と地元で暮らしたい』
という言葉が。
いや、言えてないのではない。
言えないのだ。
いざその話題を出そうとすると喉に何か詰まったような感覚になって、食事も喉を通らないし、しゃべることすらできなくなる。