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嫌いじゃなかったの!?
第10章 9ページ目。
蓮は私の肩に顎を置いて
「まだ?」
と、ちょうど吐息が耳にかかる位置で囁く。
その声音と、耳にかかる吐息で背筋がぞわりとする。
「もうちょっとだよ」
と言いつつ、震えを誤魔化そうと体を揺するようにしてその腕から逃れた
未だに蓮に触れられることが怖いなんて、知られるとまずいと思った。
これはどうしても、時が解決するもので、いくら怖くないと思っても体は言うことを聞かない。
私は蓮に
「ほ、ほら、座って待ってて?キッチン狭いから!」
そう言って蓮をキッチンから追い出す。
蓮が私のことを悲しげな顔で見ていたことは私は知らない。
私は肉じゃがをお皿に盛り、味噌汁をお椀に入れて、蓮のお茶碗には、蓮がいつも食べる量ほどご飯をよそった。
蓮の食べる量は、9年も同居していて、それ以前に、子供の頃から一緒に育っていることもあってか、完璧に把握している。
私がお盆を盛ってリビングの机にできた料理を並べる。
「うまそう!」
そんな少年のような声がする。
「よし、じゃあ、いただきまーす」
私がそう言うとそれに続いて「いただきます」も声がする。
そして、静かなディナータイム。
そして、今日も、1日が終わる。
いろんな人を置いてけぼりにして、1日が終わる。
私は、今日に取り残された1人。
今日もまた何もできなくて、後悔した人間の1人。
どんなに抗ったって、約束の日は刻一刻と歩を進め近寄って来ている。
私はどうしたいの?
その夜、私はある人に電話をかけた。