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嫌いじゃなかったの!?
第10章 9ページ目。



私は話した。


なぜか、話せてしまった。


2人に抱かれたことや、凌に言われたこと。そして、蓮に言われたことも。


松田さんは、たまに相槌を打ちながらも、黙って聞いてくれた。


話し終えると、少しだけ胸のつっかえが無くなった気がした。




「私、わからないんです。誰が好きなのか。」


蓮と凌、どちらが好きなのか。


「蓮にはたくさんお世話になって、たくさん助けられて、いろんなところに行って、すごく楽しかった。
そして、凌には初めてのことをたくさん教えてもらったんです。」


それは、行為であったり、気持ちであったり。


すごく新鮮で、楽しかった。



「でも、よく考えたら、凌に対する感情の起源は、インプリンティングなのではないかと。つまり、ひよこが生まれて初めて見たものを親だと思うアレです。
初めて、優しく触れてもらえたから、初めてだったから、勘違いしてしまったんじゃないかと」



「うーん…」


私がそう言うと松田さんは思案顔で唸った


しかし、それでも私は続けた。


「そう考えたら、私は蓮が好きなんだ、と。蓮が泣いているのを見て、ひどく胸が締め付けられて、この人に笑ってもらいたいって思ったんです。幸せにしたいって。長くお世話になっているのに、恩返しができてなくて、その恩返しをするいいチャンスなんじゃないかなって。」


自分で言っていて納得した。確かになあって。


私はまだ蓮に恩返しができていない。


私が蓮にした、何千倍も、蓮は私の面倒を見てくれた。


言葉では言い表すことができないほど。



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