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嫌いじゃなかったの!?
第10章 9ページ目。



うん。これでよかったんだ。


蓮と共に生きていく。それでいい。


何か、忘れている気がするけれど、それは気のせい。


押さえつけている感情があるけど、それは勘違い。


これは、一件落着じゃない?




「松田さんに話せてよかったです」


私が松田さんにそう言うと、


「あのさ、杏子ちゃん」


松田さんは少し悲しげな顔をして



「俺がさ、最初に言ったこと覚えてる?『お世話になった事案の大きさで選ぶことはできない』っていうの。杏子ちゃんの話は、お世話になった事案の『大きさ』から判断して、古川先輩を選ぶって言ってるように聞こえるよ」


松田さんのその言葉に、にわかに軽くなったはずの心にまた、ズシンと重りが投げつけられる。


「しかも、結婚っていうのはそんな簡単なものではないよね?お見合い結婚の方が長く続くというらしいけど、それは本当に楽しい結婚生活なのかな?これは人それぞれの解釈だろうけど、本当に愛した人との最終ゴールが結婚で、スタートも結婚だと思う。
本当に愛しているからこそ、結婚っていうのは、言葉にできないほどの幸福を味合うことができる、人生で2度あるかないかの機会。その喜びを共有したいのはどっち?」


そう聞かれて、1人の男性が思い浮かぶ。


優しい笑顔。


「これは、俺に愛している人がいるから言えることなんだけどね」


と松田さんは優しく笑う。


真希ちゃんは幸せ者だ。こんなにも優しい表情で自分のことを思ってくれる人が、家族以外にいることが。



「自分の心に聞いてみて、素直になれば?気を張ったり、建前を考える必要なんてないんだよ?」


自分の心に…


私の、本当の気持ち…


「事あるごとに、その人の顔が思い浮かんで、あの人だったらどうするかな?とか、考えちゃう人、いるんでしょ?その人が杏子ちゃんの好きな人だよ?」





その言葉で堰を切ったように涙が溢れた。


なぜだろう。



「うぅっ…」


まだ何も考えてないのに、最初から知っていたように、当たり前のように、まざまざと突きつけられた。


面白い本を読んだとき、ある人にも読んで欲しいと思った。


あの人なら、気にいる。


そう思った。



ベットに入ったとき、布団が冷たかったとき、あの人の温もりを思い出した。










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