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嫌いじゃなかったの!?
第11章 10ページ目。
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20時過ぎに玄関で物音が聞こえた。
ガチャリ
扉を閉める音。
どうやら、蓮が帰って来たようだ。
私は緊張はしていなかった。
さっきまでは緊張していたのに、突然それが消え失せた。
考えてみたのだ。
注射を刺す医者が怯えていたら、私たち患者はたまらなく恐ろしい。
それと同様だと思ったのだ。
全く緊張していないと言ったら嘘になるけれど、ガチガチに、喋るのもままならない、なんて状態ではない。
しかし、『緊張を楽しめ』なんて言う人の気持ちは到底理解できそうにない。
理解するには、後100年は生きて、様々なことを経験しなければならないだろう。
「ただいまー」
そんな声と共にリビングの扉が開く音がした
私はその声と音がした方向に向いて
「おかえり」
と、いつものように言った。
笑顔で言った。
そんな私をみて、蓮は少し不思議そうにしていたが、すぐにカバンをおいてスーツを脱ぎ、テーブルのいつもの位置に座った。
「今日は珍しいな。ご飯を完璧に作って待ってることと、俺の大好きなメニューが二個もあることが」
そう、今日作ったのは蓮の好きな春巻きと、唐揚げ。
揚げ物ばっかり。ザ・男の子!って感じの好物。