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嫌いじゃなかったの!?
第11章 10ページ目。
「うん、今日は蓮の好物が作りたかったの」
私がそう言うと
「今日なんかいいことあった?」
と、蓮が聞いてきた。
ううん。蓮。違うよ。
「あのね、蓮。松田さんと会ってきたの」
「松田って、松田朔太郎?」
「そう。その松田さん」
「なんでまた」
蓮は不思議そうに私を見ている。
杏子、ダメ。悟られては。
緊張していることが悟られてはダメ。
どうせ言ってしまうんだけど、今はまだ。
「前、松田さんの彼女が私の会社の先輩だってこと言ったじゃない?」
「あぁ」
「その先輩に紹介されたの。『彼氏の朔太郎です』って。それ以来松田さんとは会ってなかったんだけど、今日会って来た」
「あぁ、松田カップルと杏子の3人で?」
「いや、松田さんと2人きり。」
その言葉に、蓮の表情はすこし怖くなった。
ッ…
すこし怖気付いてしまいそうになる。
『うっそぴょーん!』
って、この場を和ませたい。まぁ、一度もそんなことをしたことはないけれど。
しかし、私がそんな奇行に走りたくなるほど、空気は重かった。
「なんで2人?」
蓮は声のトーンをすこし落として、私に尋ねた。
ゴクリ。唾を飲みこまないと喉が乾く。
まだ本題に入ってすらいないのにこの調子。
この先私などうなるよ。