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嫌いじゃなかったの!?
第11章 10ページ目。
〜杏子side〜
私が泣いている間、蓮は私を抱きしめていた。
もうそれは、今までのものもは違った。
ただの幼馴染を、妹分を慰める兄のような抱擁だった。
私は蓮の胸の中で、言ってはいけないとわかっていながらも、「ごめんなさい」「本当にごめんなさい」と、嗚咽を漏らしながら言った。
その度に、蓮が首を横に振るのがわかった。
蓮は私の頭を優しく撫でていた。
そして、優しい声音で、私をあやすように
「知ってた。杏子が俺のことを、俺とおんなじ気持ちの「好き」じゃないことくらい。
でも、俺は期待した。少しでも希望があれば。どんな形だっていい。杏子の心が俺になくたって、地元に帰って、俺しかいない環境になれば、俺のことを愛してくれるかもしれないって。」
蓮は空を見つめながら言う
「でも、佐伯と抱き合ってる杏子を見た時、杏子の表情を見た時。ダメだ、勝てねぇ。って思った。
言葉にできない感情が込み上げてきて、どうしようもなくなって、無性にむしゃくしゃして、その日帰ってこなかった杏子に次の日、八つ当たりした。
誰と何してたかなんて大体想像ついてたのに、わかってたのに、わかってないふりして杏子に当たった」
蓮の紡ぎ出す言葉たちに胸が締め付けられて、より一層涙が出てくる。
蓮の思いを知って、また嗚咽を漏らす。
「俺の方こそごめん。でも、好きになって後悔してない。お前にフラれて、心は痛いけど、お前を憎んだりはしない。嫌いになんかならない。」
私は蓮を抱きしめ返した。
そしてまた声をあげる。
すると蓮は楽しげな声で、
「いい大人がそんなにわんわん泣くかよ。しかもご近所に迷惑だろ」
と言う。確かにその通りだ。
私はなんとか涙を引っ込めて、嗚咽を止める。
そして私は蓮の体から体を離し、真っ赤に充血しているだろう目で蓮の目を見た
蓮のぱっちりで切れ長の目と目が合う。
「これからも幼馴染。変わらない関係でいてくれる?」
私がそう聞くと
「当たり前だろ」
と答える。
はぁ。蓮のこういうさっぱりとしたところが好きだ。