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嫌いじゃなかったの!?
第11章 10ページ目。
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「あぢぃ〜!」
一緒に外回りをしている石川さんが汗をハンカチで拭きながら呻く。
私も同じように、襟元をパタパタしながら声も出せずに頷く。
昨日は休みで、炎天下の中歩き回ることもなかったし、一日中冷房の効いた部屋で過ごしていたものだから、疲れやすくなっている。
いますぐ涼しい屋内に入りたい。
そして、もう夏が終わるまでそこから出たくない。
夏の太陽ほど恨めしいものはない。
でも夏野菜はありがとう。助かってます。
私たちはなぜ外回りをしているかと言うと、週刊ボーイズ連載の「さよならけだもの」の試し読み本を配り歩いている
「さよならけだもの」の1巻発売は来月の中旬。
週刊ボーイズの読者アンケート第2位なだけあって、力を入れたいところ。
新人漫画家の初めての単行本でもあるため、重版まではいかなくとも、次の単行本を出せるくらいの売り上げと知名度が欲しい。
そのためには、広告や、私たちの書店営業が頑張らなくてはならない。
「あと何店舗ですか?」
私が石川さんに聞くと言いにくそうに
「30店舗…」
と言った。
「……」
私は無言ながらも絶望する。
いつもならもっとはやく回れるはずが、熱中症に気をつけたり、日差し強すぎたりで、なかなか思うように回れていないようだ。
今日は帰りに佐伯さんに声をかけて、言いたいことがあるのに、果たして書店周りを終わらせて、書類仕事を終わらせて、定時までに帰ることができるのだろうか?
否、無理だろう。
でも頑張るしかないよね
「ねぇ、ちょっと休んで行く?おじさん死にそう」
「まだ15時です。さっき休憩したばかりじゃないですから」
「3時間前のことをさっきって言うの!?鬼でしょ杏子ちゃん!」
そんな愚痴をこぼしている石川さん。
「じゃあ、あと3店舗回ったらにしましょう」
「やったー!頑張ろ!って、俺の方が先輩だわ!」
石川さんは1人で騒いでいたが、仕事モードになると、テキパキと対応する。
そこに痺れる憧れる〜!
しかし、私は少しでも早く帰れるようにと気を引き締めた。