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嫌いじゃなかったの!?
第11章 10ページ目。
ここ最近思う。
こんなにしんどいなら、思うことをやめればいいんじゃないか。
好きじゃなくなればいいんじゃないか。
でも、もしそれを実践した時には、今よりも苦しくなるのは目に見えている。
それに、最近の杏子の行動の原因を考えた時にチラつくのが、杏子の背中にうっすらと残ったキスマークのことだった。
あれは一体誰が付けたのか。
わかっているようで、分からない。
いや、分からないふりをしている。
杏子はあの人を選んだのか…
なにがあったかは知らない。
何があって杏子が俺と目すら合わせなくなったのかなんて知らない。
でも確実に、あの人が、関わっていると思う。
松田に聞いたって知らないの一点張り。
だけど、どこかそんな気がする。
今日もカップラーメンにお湯を注ぐ。
自炊なんてしないし、まずできないし、めんどくさいし。
でも、たまに、あったかいご飯におかずに味噌汁に…
そんな夕食が食べたことなんてないけど、無性にそれが食べたくなる。
そういえば、俺が風邪でダウンしてる時に杏子が
「栄養つけないと治りませんよ!」
とか言って、夜に家に寄って帰ってから、朝に昨日の残りだと言ってタッパーに詰めておかずを持ってきてくれたことがある。
魚だった。
それと煮しめ。
別に特に好きじゃないけど、食べてみたら美味しかった。
涙が出そうになったのはなぜだったか。
今となってはわからない。
ただ、今現在も同じことを思っていて、前も思っていたことで共通してることがある。、
それは…
「杏子に会いたい」
ポツリと漏らしたその言葉は、あいも変わらず、部屋の静寂へと消えて行った。