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嫌いじゃなかったの!?
第13章 12

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どこかから聞こえてくる足音で私はその本から顔を上げた


どれくらい読んでいただろうか


私はその文庫本の半分まで、いつの間にか読んでいた


聞こえてきた足音がすぐそこで止まって、すぐに低くて優しい声が降ってくる



「杏子?」


私が凌を見上げると、凌の視線はちょうど私の手元に降りたところで


先ほどまで柔らかい笑みを浮かべていた凌の顔が突然「しまった」という顔に変わって


「き、杏子…さん…。もしかしてだけど…それ見ちゃいました…?」


私はその「しまった」という顔の意味がわからなくて、


「うん」


と答えた。


もしかしたら、禁断の書だったのだろうか


凌は「まじかー」とか小声でうなだれている


凌をここまでする何かがこの本にあるのだろうか?


私はそうとは思えない。


いたって普通の、”私を夢中にする本”


凌は不安そうな顔で、


「あ、の…その本、面白い?」


と聞いてきたので、私はありのままの感想を言う


「うん!すごい読みやすくて、まるで自分がその物語の登場人物かと錯覚するくらいの臨場感ある描写の表現で…」


ひとつひとつの心情にしても、場面にしても、とてもリアルでまるで、作者の実体験を書いているような


心にじわじわと広がって行く悲壮感に心が痛んで、


それでも、早く続きが読みたくてワクワクして



「すごく面白い!」


私がそう言うと凌は恥ずかしそうに笑って


「ありがとう」


と言った



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