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嫌いじゃなかったの!?
第13章 12
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杏子は泣いていた
俺の実体験だと告げると杏子は俺を抱きしめた
俺は高校生の頃、一度だけ。
少し期待を抱いていた頃、一度だけ、その日あった女に俺の身の上を話したことがある
胸の内にある黒いものを誰かに吐露したかった
誰でも良かった
そのとき女は
『辛かったね』
と言った
胡散臭い言葉だと思った
俺は辛くなんかなかったんだよ
愛されたかったんだよ
杏子は俺を抱きしめて、柔らかい暖かさで俺を包み込んで
「楽しい思い出たくさん作ろう」
と言って、俺の頭を優しく撫でて
「誠実で、真面目で、でも時にわがままで、、そんな凌を私は…」
愛してるよ
俺はそれだけで良かったんだ
慰めなんていらなかったんだ
昔の俺が救われた気がした