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嫌いじゃなかったの!?
第3章 2ページ目。
こんなにも胸の中を見透かされ、人の言葉に心を動かされたのは初めてだった
『あなたが人を愛したらいいんです』
真嶋さんの言ったこの言葉が胸の中で反響する
真っ平らな水面に言葉の雫が一滴落ちて、水紋が広がる
それは遠くに行くほど力を持つ
考えれば考えるほど、強く心に刻まれて行く
俺は『あの人』に人を愛する気持ちを教えてもらい、『あの人』に人に裏切られる気持ちを教えてもらった
でもこの人には、
人に愛されるには、人を愛するには
を教えられた気がする
でもだからと言って、今まで嫌って来た女に自分からすり寄って行くことは難しい
「なんで立ち止まったんですっけ、私たち。早く帰りましょう〜」
そう言って真嶋さんが無邪気な笑顔をこちらに向けた。
その笑顔に俺は思わず手を伸ばしていた
そして、両手で真嶋さんの顔を包み込み、手のひらで真嶋さんの顔を弄んだ
手のひらの中で真嶋さんが「なんでひゅかぁ!」と言っているのもお構い無しに遊んだ
ひょっとこみたいな顔にしたり、顔全体を横に引っ張ってみたり。
「なに笑ってるんですか!ブサイクだから笑ってるんでしょう!」
ちょっと怒った顔した真嶋さんが不機嫌そうにそう言った
言われた初めて気がついたが、
俺、笑ってたんだ。