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エリュシオンでささやいて
第4章 Bittersweet Voice
 

 その格好で、身体を揺らしながら、ベースを指で弾いている。
 出っ歯の巨大なりすが、真剣な顔をしてギターを弾く裕貴くんと、小さく出した音色を合わせ、凄いベーステクを披露しているようだけれど、どうしても微笑ましく思ってしまう。

 ベーシストならぬ、べーリスト。
 
 くふりと笑ったら、りすが言った。

「なんだよ」

 早瀬……りすがあたしの方を向くと、大きなふさふさ尻尾が左右に揺れた。

 尻尾はとてつもなく優雅で雄々しくて、格好いい。

 やばい。
 あの尻尾、素敵。
 
「だからなんだよ。シンセのところから、じっと見るなよ。不気味なんだよ」

 尻尾。
 尻尾。
 
「りすぴょん」

「あ゛?」

 かなり嫌々そうな声ながら、返事をしてくれるりすの王様。
 ウサ子は、素直に褒め称える。

「とても格好いいぴょん(尻尾が)」

「……っ」

「必要不可欠だと実感したぴょん(尻尾が)」

「そ、そうか」

 照れたように身じろぎしながら、あたしに背を向くと、ベースをまた弾き始めた、巨大な王様リアルりす。

 大きな尻尾がふぁさりふぁさりと左右に揺れて、あたしの顔は満面の笑み。

「素敵(尻尾が)」

「……っ」

「もっと(尻尾を揺らして)」

 なぜか激しいベースが聞こえるが、尻尾が揺れてあたしは満足。


「だあああああ!! かぶり物のりすとうさぎでなにおかしなことしてやがるんだよ!! 全身鳥肌立つ、こっちの身になってくれ――っ!!」


 
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